中国で自動運転車の開発を手掛ける文遠知行(WeRide)は、先日アメリカ合衆国カリフォルニア州において重要な進展を遂げ、無人運転車の試験許可を取得しました。この突破口となったのは、カリフォルニア州公共事業委員会(CPUC)から発行された2つの許可、有人運転と無人運転の許可です。これにより、文遠知行は公共道路で乗客を乗せての試験走行が可能になりますが、現時点では料金の徴収や一般へのサービス提供は認められていません。
CPUCの広報担当者によると、文遠知行はサンノゼとその周辺地域で試験走行を行うことが許可されており、現在12台の車両が稼働しているとのことです。注目すべきは、文遠知行は2021年には既にカリフォルニア州自動車局(DMV)から許可を取得し、乗客を乗せない自動運転車の公道試験を開始していたことです。
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しかし、文遠知行のカリフォルニア州における発展は、やや緩慢なようです。DMVのデータによると、2023年の同社のカリフォルニア州における自動運転走行距離はわずか4万2391マイルで、競合他社のWaymoの900万マイル以上を大きく下回っています。文遠知行は、カリフォルニア州における商業化計画についてもほとんど公表していません。
一方、文遠知行は50億ドル近くの評価額でアメリカ市場への上場を準備しています。このニュースは、アメリカ商務省が国家安全保障上の懸念から中国製のネットワーク接続自動車(自動運転車を含む)を禁止する可能性があるという報道と対照的であり、中国のテクノロジー企業がアメリカ市場で直面する複雑な状況を浮き彫りにしています。
文遠知行のCPUC許可証には、「運転手を含め、乗客16名未満の車両に限定する」という特別な条項があります。この条項は、Waymo、Cruise、Zooxなどの競合他社の許可証には存在せず、文遠知行の多様な製品ラインと関連している可能性があります。同社は自動運転タクシーに加え、10名乗りの自動運転バスも開発しています。
文遠知行のアメリカ市場への進出は、機会と課題の両方に満ちています。一方では、カリフォルニア州の試験許可取得は、技術検証と商業化への道を切り開きました。他方では、地政学的要因と規制環境の不確実性が、長期的な発展に影響を与える可能性があります。このような複雑な環境の中でどのように着実に事業を進めていくかが、文遠知行が直面する重要な課題となるでしょう。