Archetype AIの研究者らが、「ニュートンAIモデル」と呼ばれる人工知能基礎モデルを開発しました。このモデルは、センサーデータの分析のみで、訓練データに含まれていない現象も含め、様々な物理現象を正確に予測できます。この画期的な研究成果は、物理学研究の方法を根本的に変え、科学的発見に新たな章を開く可能性を秘めています。

従来、物理現象のためのAIモデル構築には、多くの物理法則や専門知識を事前情報としてモデルに入力する必要があり、その適用範囲は限定的で、他の分野への汎化が困難でした。「ニュートンAIモデル」は、全く新しい「現象論的」アプローチを採用し、いかなる物理法則や事前知識にも依存せず、大量のセンサーデータの分析から物理世界の法則を自律的に学習・理解します。

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研究者らは、41個の公開データセットから得られた5億9000万個のセンサーデータサンプルを用いてモデルを訓練しました。これには、電流、流体の流れ、光学など、様々な物理現象が含まれています。訓練された「ニュートンAIモデル」は、機械運動、熱力学など、様々な物理現象を符号化し予測することができ、都市規模の気象変化といった複雑な非解析的物理過程の予測も可能です。

モデルの汎化能力を検証するため、研究者らは一連の実験を行いました。これには、ばねマス系を用いた機械的振動のシミュレーションや、温差発電装置を用いた熱力学現象のシミュレーションが含まれます。実験結果は、「ニュートンAIモデル」がこれらの物理システムの将来の挙動を正確に予測できることを示しており、その予測精度は、特定の物理システム向けに訓練されたモデルを上回りました。

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「ニュートンAIモデル」の登場は、物理学研究に新たな可能性をもたらします。科学者たちが実験データをより迅速かつ正確に分析し、新たな物理法則を発見するのに役立ち、複雑な物理システムの予測と制御にも利用できます。さらに、このモデルは「ゼロショット推論」能力を備えており、これまで接触したことのない物理現象を予測できるため、科学的発見に新たな領域を切り開きます。

研究者らは、「ニュートンAIモデル」は始まりに過ぎず、今後、モデルの訓練データセットをさらに拡張し、他の分野への応用を探求していくとしています。この研究成果は、様々な物理世界過程を理解し予測するための統一的なAI基礎モデル構築への希望をもたらしました。

論文:https://cdn.prod.website-files.com/669fb9b0365257a2d64b9744/671062d53917e78989931495_Phenomenological%20AI%20Foundation%20Model%202024.pdf