中国発のスタートアップ企業DeepSeek(深度求索)が開発した、高性能かつ低コストの生成AI大規模言語モデル(LLM)が、最近世界的な注目を集めています。日本のAI研究の第一人者である東京大学教授の松尾豊氏は、日本経済新聞のインタビューで、DeepSeekの技術レベル、オープンソース戦略、そして日本企業への影響について詳細な分析を行いました。

松尾豊氏は、DeepSeekの技術は非常に優れており、その性能はアメリカのOpenAIが開発したChatGPTに匹敵すると述べています。同氏は、DeepSeekが新しいモデルを発表するたびに詳細な技術論文を発表し、モデル最適化における革新的な点を示していると指摘しました。例えば、今年1月に発表された最新のモデル「R1」は、強化学習によって推論能力が向上し、OpenAIの「o1」モデルと同等のレベルに達しています。

DeepSeek

松尾豊氏は、中国のAI開発レベルはアメリカと肩を並べ、場合によってはアメリカを凌駕していると述べています。同氏は、中国にはアリババ、テンセント、百度などの巨大IT企業だけでなく、多くの優秀なエンジニアが存在し、活気のあるAIエコシステムが形成されていると指摘しました。DeepSeekがそのような環境の中で台頭してきたことは驚くべきことではなく、世界的なAI競争の勢力図をさらに変える可能性があります。

松尾豊氏は、DeepSeekの成功は日本のスタートアップ企業にとって重要な示唆を与えると強調しました。DeepSeekは大手IT企業ではないにも関わらず、着実な技術開発によって世界トップレベルの精度を実現しました。これは、日本においても、技術革新に集中すれば、AI分野で突破口を開くチャンスがあることを示しています。

DeepSeekはオープンソース戦略を採用しており、これはMetaやアリババなどの企業と同様です。松尾豊氏は、オープンソースモデルは世界中の開発者にとって強力な基盤を提供し、追加学習や性能向上を容易にすると指摘しました。同氏は、DeepSeekの登場によってオープンソース勢力の影響力が強まったと考えており、OpenAIやGoogleの製品のような非公開モデルは依然として競争優位性を有していますが、オープンソースモデルも特定の状況下では卓越した性能を発揮できると述べています。

AIモデルのセキュリティリスクについて、松尾豊氏は、リスクは使用方法によって異なると述べています。オープンソースモデルはローカルで実行できるため、データ漏洩のリスクを回避できますが、オンラインサービスを使用する場合は、データがサーバーに送信されて処理されます。同氏は、DeepSeekであろうとOpenAIであろうと、ユーザーはサービス提供者に対して信頼を置く必要があると強調しました。なぜなら、データの使用方法や学習を完全に排除することは難しいからです。