先日、ニューヨーク州最高裁判所において、74歳の起業家ジェローム・デワルド氏(Jerome Dewald)が法廷でAI生成ビデオを再生したことで、裁判官から強い反感を招きました。デワルド氏は、保険会社メットライフ(MassMutual Metro)との労働紛争を巡って出廷し、AIによる仮想アバターを使って弁論しようとしたのです。しかし、この試みは裁判官の承認を得られず、逆に激怒させてしまいました。
法廷でデワルド氏は、AIが生成した男性アバターの動画を再生しました。動画の中の仮想弁論者は服装も整っており、デワルド氏よりも30歳若く見える人物で、「尊敬する裁判官、本日は謙虚な気持ちでここに参りました」と発言を始めました。しかし、サリ・マンザネット=ダニエルズ裁判官(Sallie Manzanet-Daniels)は明らかに困惑し、「これは何ですか?この事件の弁護士ですか?」と尋ねました。デワルド氏は「私が生成したものです」と説明しました。仮想アバターだと知ると、裁判官は激怒し、「事前にそれを私に知らせていませんでしたね」と発言しました。
画像出典:AI生成画像、画像ライセンスプロバイダーMidjourney
その後、デワルド氏は裁判官から厳しく批判されました。彼は25年前の喉頭癌のため法廷で直接弁論できないと主張していましたが、裁判官は、彼と法廷職員が30分以上口頭でやり取りしていたことを指摘し、彼の主張と矛盾していると述べました。裁判官は憤慨して、「私は誤解されるのが嫌いです。あなたは法廷をあなたのビジネスプランの宣伝に利用することはできません」と述べました。
デワルド氏が経営するスタートアップ企業Pro Se Proは、一般の人々がリアルなビデオアバターを作成し、訴訟で自身を代理させることを支援する会社です。デワルド氏はインタビューで、法廷のこの技術に対する反応は予想外だったと述べています。彼は当初、Tavusというサービスを使って自身のAIアバターを作成する予定でしたが、時間が足りず、既製のAIモデルを選択しました。「このイケメンはジム(Jim)と呼ばれています」とデワルド氏はユーモラスに言いました。
AIの使用方法が、特にAIによる「幻覚」に対する世間のネガティブな見方の下で、事件の結果に影響を与える可能性があると考えているものの、デワルド氏は法廷で新しい表現方法を見つけることを望んでいます。