バイオテクノロジー分野において、新興企業Latent Labsが5000万ドルの資金調達を受け、ベールを脱ぎました。元Google DeepMindの科学者Simon Kohl氏によって設立された同社は、人工知能(AI)の基本モデルを活用して「生物学をプログラム可能にする」ことを目指し、バイオテクノロジー企業や製薬会社と連携してタンパク質の生成と最適化を行っています。

Latent Labsの使命を理解するには、まずタンパク質が生物学において果たす重要な役割を認識する必要があります。タンパク質は生細胞内で全てを駆動する基礎であり、その構造が機能を決定します。しかし、従来、タンパク質の三次元構造を特定することは、時間と労力を要するプロセスでした。DeepMindの画期的な成果であるAlphaFoldは、機械学習と実際の生物学的データを組み合わせることで、約2億種類のタンパク質の構造を予測することに成功しました。この進歩により、科学者たちは病気の理解、新薬の設計、さらには全く新しい合成タンパク質の創出において、より優れたツールを得ることになりました。

投資、資金調達、お金

Latent Labsの創設者であるSimon Kohl氏は、DeepMindの研究科学者であり、AlphaFold2の中核チームに所属していました。2022年末、彼はタンパク質設計分野に未だ多くの未開拓の可能性があると認識し、Latent Labsを設立し、最先端のタンパク質設計モデルの開発に専念することを決めました。

現在、Latent Labsは約15名の従業員を擁しており、その中にはDeepMind出身者も含まれています。本社はロンドンにあり、サンフランシスコにもラボを構えています。この二拠点体制により、Latent Labsは現実環境でモデルをテストし、必要なフィードバックを得て、技術の進歩を確実にしています。

Kohl氏は、Latent Labsの最終目標は、従来のラボ実験への依存を減らし、生物学研究をより効率的で自動化されたものにすることだと述べています。彼は、科学者が特定の疾患の薬物標的仮説を提示した際に、Latent Labsのモデルが「ボタンを押す」だけで、あらゆる理想的な特性を備えたタンパク質医薬品を生成できるような理想的な状態を想定しています。

ビジネスモデルとしては、Latent Labsは自社で医薬品を開発する計画はなく、サードパーティとの連携を通じて、早期開発段階のリスクを軽減し、開発を加速することを目指しています。Kohl氏は、バイオ医薬品や生命科学企業との連携によって、Latent Labsの影響力を最大限に発揮できると確信しています。

今回の5000万ドルの資金調達には、1000万ドルのシードラウンドと4000万ドルのシリーズAラウンドが含まれ、Radical VenturesやSofinnova Partnersなどが主要投資家となっています。調達資金は主に、チームとインフラ、特に大規模モデルの開発を支援するための計算能力の強化に充てられます。

ますます多くの新興企業やテクノロジー大手企業がバイオテクノロジーの計算化に注目する中、Kohl氏は、この分野はまだ初期段階にあり、将来は大きな革新の可能性があると述べています。